税務会計
コラム

税理士の懲戒処分

2024.08.23 #会計税務

コラム

私たち税理士は、税理士の使命を認識し、会則及び税理士法を遵守して適正に業務を遂行する必要があります。不祥事を起こした税理士は、財務大臣による税理士業務の禁止及び税理士業務の停止の懲戒処分がなされます。そのため、私の事務所では脱税幇助と捉えられかねない相談業務や税務申告は一切行っておりません。

どういった不祥事があるのか、一例を挙げてみます。

【事例】
過去、粉飾決算を行うために意図的に過大に計上した未成工事支出金を、黒字となった後続年分において取り崩すことにより、真正の事実に反する申告書を作成した。

【違反の内容】
故意に、真正の事実に反する税務書類の作成

【量定】
6月以上2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止

懲戒処分件数は、過去10年間で最多だそうです。私もしっかり気を引き締めたいと思います。

災害時の税務上の取扱い

2024.08.10 #会計税務

コラム

先日の地震で「南海トラフ地震臨時情報」なるものが、気象庁から発表されました。南海トラフ地震が絵空事なんかではないことを改めて感じました。

さて、夏から秋にかけては台風シーズンということで、風水害により法人の資産が被害を受けることも想定されます。その場合、損害額や復旧費用、被災した従業員や取引先を支援したときの支出等の多くは、当期の費用や損失として損金とすることができます。

被災した自社の従業員等へ災害見舞金品を支給した場合は、どうなるでしょうか。この場合は、慶弔規定などの合理的な基準に基づき支給した場合は、福利厚生費となります。自社の従業員等と同等の事情にある専属下請先の従業員等やその親族等に支給する災害見舞金品についても同様です。

取引先等へ災害見舞金等を贈った場合は、どうなるでしょうか。取引関係の維持や回復のために災害見舞金等を贈ったときは、その支出は交際費等に該当せず、損金算入が認められます。

取引先の売掛金等を免除した場合は、どうなるでしょうか。被災した取引先の復旧支援のために売掛金や貸付金等の債権を、その復旧過程期間内に免除したとき、その免除による損失は、寄付金や交際費等以外の費用として損金算入することが認められます。

災害時の税務上の取扱いについては、国税庁Webサイトを参考にしてください。「災害関連情報」で検索されるといいと思います。

会社を守る

2024.07.18 #会計税務

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私が製造業の会社を辞め、会計事務所に転職した初日の午後、社内で企業防衛推進会議なるものがありました。お客様の会社が抱えている潜在的なリスクを分析し、会社や経営者、従業員等を如何に守るかといったことを考えていく場です。簡単に言うと、保険を使ってリスクヘッジをするのです。会計事務所は、生命保険や損害保険の代理店となっていることがあります。

保険の代理店はどこにでもあります。確か、私の事務所の近所のアミの中にもあります。ただ、会計事務所が選ぶ保険というのは、会社の財務内容を把握しているからこそ、会社の数字が根拠となっています。借入が○○円あって、運転資金が○○円必要で、そのためには納税資金も加味して○○円必要であると考えます。それに加え、業種、被保険者の年齢、後継者の有無、会社を取り巻く状況なども加味しますし、保険料の払い込み、保険金の受取り、保険の解約など、様々な状況における税金の取り扱いも考えます。つまり、私たちが提案する保険というのは、会計事務所だからこそ出来る提案で、すごく合理的に考えられているということです。

保険屋の仕事は保険を売ることがゴール。会計事務所である私にとってのゴールは、リスクから会社、経営者、従業員等を守りきること。保険を売ることは、その手段に過ぎないのです。

私にとって、私の顧問先は大切な存在なのです。どんなときでも笑顔でいて欲しい。そのためには、リスクを説明し、時には説得してでもリスクヘッジの重要性を説かねばならんのです。

戦略経営者

2024.06.18 #会計税務

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表題に掲げた「戦略経営者」。BSやYouTubeで放送されており、また雑誌も発行されています。是非すべての中小零細企業の経営者に見ていただきたいです。

どんな内容かと言いますと、様々な取り組みをしている中小企業の事例が紹介されています。中小企業は、人・モノ・金といった経営資源が乏しいことが多いですが、それでも他社と差別化を図り、利益を獲得していかなければ、会社は存続していくことが出来ません。この「戦略経営者」を通じ、生の声を聞き、生の現場を見ることで、多少なりとも自社に活かせるものがあるのではないかと思います。

この「戦略経営者」を見ていると、どんな斜陽産業でもチャンスがあるのではないかと思わせてくれます。

働く人を大切に

2024.05.29 #会計税務

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多くの中小企業は、労働集約型の事業構造になっています。労働集約型とは、人間の労働力への依存度が高く、人間の手による仕事量が多い産業のことです。その反対の概念として、資本集約型があります。機械や設備により自動化が進んでいるため、人間の労働力への依存度が低い産業のことです。

「働く人を大切に」というのは、労働集約型である企業に特に言えることです。しかし現実は、社員に過度な負担を強いることにより、社員のモチベーションは著しく低下し、世間からブラック企業という烙印を押されることもあります。

育ってきた社員が去る ⇒ 金をかけリクルート ⇒ 当初は未経験だが、仕事を通じ少しずつ育つ ⇒ 育ってきた社員が去る

もう無限ループです。そして全体的な戦力はどんどん落ちていきます。会社の雰囲気も悪いです。では「働く人を大切に」とは、具体的になにか?決してお金の問題だけではないのです。

「定額減税」の取扱いは大丈夫ですか

2024.05.10 #会計税務

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いよいよ目前に迫った定額減税。準備は出来ていますでしょうか?令和6年6月1日以後の最初の給与・賞与等の支払いから始まりますよ!早いところだと、給与が10日払いの会社が該当すると思います。

準備すべきポイントは3つ。
(1)控除対象者の確認と減税額の確定
(2)「各人別控除事績簿」の作成
(3)給与等の明細書の様式の見直し

(1)についてですが、まず「令和6年6月1日」時点で、自社の従業員のうち「誰が」「いくら」減税となるのかを確定しなければなりません。扶養控除等申告書だけの情報では、漏れが生じるケースがあります。また共働き夫婦でダブることがないよう、気をつけなければなりません。

(2)についてですが、減税額が確定したら「各人別控除事績簿」を作成すると良いでしょう。各従業員の氏名、扶養親族等の人数、合計の減税額を記載した一覧表です。特に扶養親族が多い従業員の場合は、減税額を一度に控除しきれず、数か月にわたり減税事務が必要になります。制度開始前に各人・各月の控除額などを記録しておきましょう。

(3)についてですが、定額減税がスタートすると、給与明細書に「定額減税〇〇円」といった、給与等の所得税から控除した額の記載が必要になります。そのため給与等の明細書の様式を見直しておきましょう。

ちなみに、給与計算担当者が忘れてはならないのが、定額減税後に所得税の納付額が0円となる場合でも、納付書の提出が必要なことです。さぁ混乱必死です。

帳簿は自分でつける

2024.04.08 #会計税務

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私は、自分の事務所の帳簿は自分でつけています。予算も組んであるので、令和6年の売上や利益の大体の着地点は把握しており、毎月その進捗状況を管理しています。臨時の仕事等で売上が上振れするときは、うれしいもんですよ。その反対で、想定よりシステム料がかかるなぁ・・・なんて頭が痛くもなります。帳簿を自分でつけるのは税理士なんだから当たり前でしょ?いやいや、事業者なら皆そうすべきだと思いますよ。

記帳を会計事務所にまかせて、試算表を受け取ったって見やしませんって。いいとこ眺めるぐらいです。自分で入力すると、その数字は、経営に活かせる情報など色々なことを訴えてきますよ。

勘と度胸の経営では、倒産や廃業の可能性がグッと高まりますよ。かつてのフランスのルイ14世は、自己破産時に帳簿を提出させました。きちんとした帳簿を持ってこられない者の罰則は「死刑」という恐ろしいものでした。ちなみに、帳簿をつけ数字を見て経営している人たちは、あまり倒産していなかったそうです。

自社で帳簿をつけて、会計事務所に監査してもらい、帳簿の信頼性をあげる。そして、その数字を分析し、次の一手を考える。これが経営者の最も大事な仕事ではないでしょうか。

わけわかめ

2024.03.11 #会計税務

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6月から給与所得者に係る定額減税の月次減税事務が始まる予定です。今からでも遅くないから、国は単に国民に給付してくれ。ホント切に願います。この無茶苦茶面倒である定額減税ですが、そのポイントの一つとして、給与担当者が従業員の「同一生計配偶者」と「扶養親族」を正しく把握することが求められます。

みなさん配偶者の種類って正しく把握していますか?「同一生計配偶者」以外にも「控除対象配偶者」や「源泉控除対象配偶者」なんてのもあります。違いがしっかり言えたら凄い。私は言えません・・・。正しく暗記していなくても、都度調べればいいとは思いますけどね。定額減税は「同一生計配偶者」の正しい把握が必要です。

この制度、絶対に定額減税の「二重取り」が発生して、もう”わけわかめ”状態になると思う。DX推進で業務効率化や生産性向上を目指すと言いながら、次々に面倒な仕事を増やすこの国に、オワコンという称号を与えよう。

景気が悪い

2024.02.25 #会計税務

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日経平均株価がバブル絶頂期の最高値を更新しました。物価高で苦しむ実生活とは異様にかけ離れた話です。それもそのはず、株価は「景気の先行きを映す鏡」ですから、今後は給料なども上がり、実生活でも実感していくのでしょう。はなしてそんな楽観的な話となるでしょうか?

景気が良くなれば、仕事も増え、今よりは売上も確保できるだろう。今は辛抱するしかない・・・

そうでしょうか。世の中の景気が悪くとも、会社の業績については景気がいい状態を作れるはずです。売上を確保するために、どんな策を講じていますか?なにもしていない?それではジリ貧です。新幹線が来るから、お客が増えるだろう。増えるだろうではなく、増やすのです。呼び込むのです。そのためにどんな策を講じますか?

零細企業の経営者は忙しい。昼は現場で体を動かし、夜は事務作業。毎日ヘトヘト。でも一生懸命にやっているからこそ、売上の減少は景気のせいにするしかない。よくわかります。でも社長は使用人ではないのです。経営者なのです。経営者は「モノが売れる仕組みづくり」を常に考え、策を講じ続けなければなりません。

売上拡大は大事ですが、他にも方法はあります。利益率の改善です。売上拡大には労働力のさらなる投下が必要になります。それは可能でしょうか?多少の売上を減らしても、利益率が改善できれば必要な利益は確保できます。働く時間も減らせるかもしれません。

従来の商売の仕方のままでは、利益率の改善はそう簡単ではありません。そこで、ちょっと戦うステージを変えてみてはどうでしょうか?なんらかの独自の価値を加えることは出来ませんか?価格を主導できるようになれば、利益率の大幅な改善が図れる可能性があります。

簡単な話ではありませんが、それを考えるのは経営者の仕事です。経営者の下には、家族を持った従業員が多数います。責任重大です。

パーキング・メーター

2024.02.20 #会計税務

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パーキング・メーター代の領収書に消費税が書いてない?じゃあ10%の課税仕入れでいいですよ。

聞かれたことはないですが、聞かれたらそう答えました。あぶねぇ・・・
駐車料金と同じだと思っていました。そもそもパーキング・メーターの作動手数料が、条例の定めによる「警察手数料」に該当することが知らなかった。仮に警察手数料に該当することを知っていたとしても、行政手数料のように、民間業者と競合するものは課税扱いになるという考え方があるので、そういった意味でも課税扱いになると判断したと思います。難しいね消費税。やはり日頃からの情報収集は欠かせませんね。

さて、所得税の確定申告業務に戻ります。終わったら次、終わったら次、まるで会計わんこそば。なんとか今月中にはすべて終わらせます。3月はやりたいことがあるのです。

スムーズな決算のために

2024.02.13 #会計税務

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3月は企業の決算が集中する月です。決算は正しい税務申告はもちろんのことですが、経営状況の把握や経営計画策定の基礎になる重要な手続きです。確認しておくべき事項をおさらいしておきましょう。

決算手続きでは、資産・負債の残高を確定する作業が必要になります。決算日までに、売掛金・棚卸資産・固定資産・仮払金等について、次のような点を確認しましょう!

①請求の再確認・・・売上の請求漏れ(計上漏れ)の確認
②滞留・不良債権への対応を検討・・・貸倒損失や貸倒引当金を計上できる条件
③不良在庫は決算日までに処分する・・・処分時の写真や処分業者の領収書などの証拠を残す
④固定資産の確認・・・売却、除却、廃棄の確認、取得資産は償却費計上のために事業供用日を確認
⑤少額減価償却資産の特例が適用できるか・・・取得価額30万円未満、事業の用に供しているか
⑥修繕費か資本的支出か・・・通常の維持管理、原状回復費用、資産価値の増加、耐久性の増加
⑦仮払金や立替金の精算・・・BSの資産の部に仮払金等の残高が計上されないように
⑧決算日をまたぐ売上計上・・・売上の認識基準、期末棚卸計上分
⑨経費計上のタイミング・・・前払費用の計上、短期前払費用の特例の適用要件を確認
⑩インボイス関係・・・免税事業者との取引、差し引かれた振込手数料

決算を固めるためには、BSを固めるべし。勤務時代に教えられた鉄則です。